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No.332026.01.21

逆立つ鱗、震える命。松かさ病という「極限の対話」。

金魚の鱗が松ぼっくりのように逆立ち、体がパンパンに膨らんでしまう。その痛々しい姿に、私たちは「どうしてこんなことに」と立ち尽くしてしまうかもしれません。それは「松かさ病」と呼ばれる、金魚の体が抱える最も過酷な試練の一つです。Juane * です。こんにちは。

今日は、この難病と言われる状態の裏側で何が起きているのか、そして私たちが最後まで忘れてはならない「寄り添い方」についてお話しします。

体の中で起きている「氾濫」

松かさ病の正体は、実は皮膚の病気ではありません。何らかの原因で腎臓などの内臓がうまく機能しなくなり、体の中から水分を排出できなくなる「水腫(すいしゅ)」という状態です。外へ出せなくなった水が体内に溜まり、内側から鱗を押し上げてしまう。

金魚の小さな体の中で、生きていくためのバランス(調和)が大きく崩れてしまっているのです。これは、金魚が自身の持つ生命力のすべてを使い、必死に「今」を維持しようとしている、極限の闘いでもあります。

最後のバリアを支える

「完治させる」ことが難しい場合もあるこの病気に対し、私たちができることは、彼らが少しでも楽に呼吸し、自分自身の力で調整を取り戻せる環境を整えることです。これまでもお伝えしてきた「0.5%の塩浴」は、ここでも大きな意味を持ちます。

浸透圧の差を縮めることで、体に入ってくる水の量を減らし、弱った内臓の負担を極限まで軽くしてあげる。それは、治療というよりも「これ以上、頑張らせないための優しさ」かもしれません。

絶望ではなく、尊厳と共に

病状が重くなると、私たちはつい「治らないなら無意味だ」と、結果を求めて焦ってしまいます。けれど、命の価値は「何ができるか」や「治るかどうか」にあるのではありません。今、この瞬間を懸命に生きている。その事実をそのまま受け入れ、最期まで心地よい環境を提供し続けること。

たとえ泳ぎが止まっていても、その鱗が逆立っていても、彼らは確かに私たちのパートナーであり、尊い一つの命です。その尊厳を最後まで守り抜くという覚悟が、私たち飼い主にとっての、本当の「ケア」なのだと思います。

一瞬の輝きを、瞳に焼き付けて

松かさ病との時間は、命の儚さと力強さを同時に突きつけてきます。 奇跡的に回復し、再び鱗が整う瞬間もあれば、静かに幕を閉じる時もあるでしょう。私たちJun * Juaneも、そんな命の最も震える瞬間、最も切実な姿を、ごまかすことなく真っ直ぐに見つめていきたい。 一匹の金魚が生きた証。その重みを、これからも大切に紡ぎ続けていきます。

【参考資料】

内臓疾患と水腫(エドマ): 松かさ病は、主にエロモナス菌の感染による内臓機能(特に腎臓)の不全が原因で起こります。淡水魚は常に周囲から水が体内に浸入する環境にあるため、腎臓による排水機能が停止すると、体液が皮下や腹腔に貯留し、物理的に鱗を逆立たせます。

浸透圧調整の補助 : 0.5 % の塩浴は、飼育水の塩分濃度を魚の体液に近づけることで、受動的に体内へ浸入してくる水の量を最小限に抑えます。これが腎臓の負担を減らす唯一の物理的な補助手段となります。

低活性と安静 : 代謝が極端に低下している状態のため、強い水流や明るすぎる照明はストレスとなり、心肺機能への負担を増加させます。暗く静かな環境下での管理が、延命および回復の可能性を広げることが知られています。