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No.302026.01.21

揺らぐバランス。重力と向き合う「転覆病」のお話。

水槽をのぞいたとき、金魚が逆さまになって浮いていたり、うまく潜れずに力なく揺れていたりする姿を見ることがあります。それは「転覆病」と呼ばれる状態。命に別状がなくても、思うように泳げないその姿を見るのは、私たちにとっても切ないものです。Juane * です。こんにちは。

今日は、金魚がバランスを崩してしまう理由と、その揺らぎにどう寄り添うかについてお話しします。

「真っ直ぐな体」ゆえの難しさ

以前、金魚には「胃」がないというお話をしました。 食べたものがすぐに腸へと運ばれる金魚にとって、消化の良し悪しは、体全体のバランスに直結します。腸の中にエサが溜まったり、ガスが発生したりすると、すぐ近くにある「浮袋(うきぶくろ)」を圧迫してしまいます。胃がないというシンプルで真っ直ぐな体の仕組みは、同時に、少しのつまずきで重心を崩しやすいという繊細さも合わせ持っているのです。

焦らず、リズムを整え直す

ひっくり返った姿を見ると、つい慌てて薬を探してしまいがちですが、転覆病の多くは「環境とリズムの乱れ」から起こります。まずは、数日間の絶食(お休み)を。 お腹の中を空っぽにして、圧迫されていた浮袋を自由にしてあげること。そして、水温を一定に保ち、0.5%の塩浴で体力の消耗を抑えてあげましょう。それは、金魚が自分の力で「中心」を取り戻すための、静かな時間を作ってあげる作業です。

「できないこと」を否定しない

泳ぎたいのに泳げない。その姿を「可哀想な病気」としてだけ見るのではなく、今この子は「一生懸命にバランスを取ろうとしている最中なんだ」と捉えてみるのはいかがでしょうか。今の状態をそのまま受け入れ、彼らが持つ「生きようとする意志」を信頼する。

たとえ少し体が傾いていても、エサを食べ、こちらを見つめる瞳に力があるのなら、それもまた、その子が懸命に生きている一つの形です。私たちができるのは、彼らが少しでも楽に過ごせるよう、水流を弱めたり、環境を整えたりして、その「今」に寄り添うことだけです。

調和の中に宿る輝き

転覆病との向き合い方は、まさに「対話」そのもの。 エサの量、水温の揺らぎ、そして彼らの小さな変化。その一つひとつに耳を澄ませ、少しずつ調和を取り戻していくプロセスが大切だと思います。

【参考資料】

浮袋と消化管の物理的関係 : 金魚などのコイ科の魚は「有管魚(ゆうかんぎょ)」と呼ばれ、浮袋と食道が細い管(気管)で繋がっています。そのため、消化不良による腸の膨張やガスの発生が直接的に浮袋の機能(浮力調整)を阻害しやすく、転覆症状を引き起こす大きな要因となります。

低水温と転覆の相関 : 水温が低下すると消化酵素の活性が下がり、腸内でのエサの滞留時間が長くなります。これがガスの発生を招き、冬季や季節の変わり目に転覆病が多発する生理学的な理由です。

塩浴による浮力補助 : 0.5 % の塩分濃度は真水よりもわずかに比重が高くなるため、金魚にとっては浮力のコントロールがしやすくなり、姿勢維持に必要な筋力の消耗を抑える効果が期待できます。