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No.382026.01.21

江戸錦(エドニシキ)— 伝統の形に、色彩の「粋」を纏わせて。

らんちゅうの完成されたフォルムに、ふわりと色鮮やかな着物を着せたような金魚。それが江戸錦です。その名からは江戸時代の古風な風情を感じますが、実はこの品種、昭和の時代に情熱ある交配によって生まれた「新時代の芸術」でもあります。Juane * です。こんにちは。

今日は、形と色が完璧な調和を見せる、江戸錦の奥深い魅力についてお話しします。

「引き算」の形と「足し算」の彩り

江戸錦の大きな特徴は、らんちゅう譲りの「背びれのない滑らかな背中」と、赤・白・藍色が複雑に混ざり合う「キャリコ(三色)」の色彩です。余計なものを削ぎ落としたストイックな「らんちゅう」の造形に、あえて賑やかな色彩を足していく。一見すると相反する要素が、一匹の体の上で見事に溶け合っているのが江戸錦の凄みです。それはまるで、質素な中におしゃれを忍ばせる、江戸っ子の「粋」を体現しているかのようでもあります。

透明な鱗が作る、奥行きのある「青」

江戸錦をじっと見つめると、鱗がキラキラ光る部分と、しっとりとした透明な部分が混ざっていることに気づきます。これは「モザイク透明鱗」と呼ばれる特徴です。この透明な鱗越しに見える内側の色が、金魚の世界では珍しい「藍色」や「浅葱色(あさぎいろ)」を作り出します。単なる表面的な色ではなく、内側から滲み出すような色彩の層。その奥行きこそが、江戸錦に「錦絵」のような重厚な気品を与えているのです。

異なる個性が響き合う「調和」

江戸錦は、らんちゅうと東錦という、全く異なる個性を持つ二つの品種が出会って生まれました。 別々のルーツを持つものが混ざり合い、新しい一つの美しさを作る。そのプロセスは、私たちが多様な他者と出会い、新しい自分を見つけていく人生の旅にも似ています。

個々の違いを認めつつ、全体として調和する「共同体」のあり方を大切するように・・・。江戸錦の複雑な色彩が、一匹の中で見事な均衡を保っている姿は、私たちに「多様であることの美しさ」を静かに教えてくれていると感じます。

水中に浮かぶ、動く錦絵

江戸錦が水槽をゆったりと横切る姿は、まさに水の中を漂う「錦絵」そのものです。 派手すぎず、かといって地味すぎない。その絶妙なバランスの中に、日本人が大切にしてきた「わび・さび」と「粋」の精神が宿っています。

私たちJun * Juaneも、この複雑で繊細な色彩の重なりを、光の粒一つひとつまで大切に写し取りたい。伝統をリスペクトしながらも、常に新しさを探究する。そんな江戸錦の凛とした姿勢に、私たちも学び続けたいと思っています。

【参考資料】

品種の成立 : 昭和26年(1951年)、金魚研究家の二代目・秋山吉五郎氏によって、らんちゅうと東錦(オランダ獅子頭×三色出目金)を交配して誕生しました。完成までに長い年月をかけた、戦後日本を代表する傑作品種の一つです。

モザイク透明鱗の科学 : 普通の鱗(銀色に光る反射層がある)と、反射層を持たない透明な鱗がモザイク状に混在する遺伝的特徴です。透明鱗の部分では体内の組織や血液の色が透けて見えるため、独特の「青(藍色)」や「ピンク」の発色が可能になります。

色彩のバリエーション : 江戸錦の美しさは「赤・黒・青・白」の配分で決まるとされますが、一匹として同じ模様が存在しないのも大きな魅力です。これは多因子遺伝によるもので、環境や成長過程でも微細に変化し続ける「生きている芸術」としての側面を持っています。