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No.512026.01.21

オランダ獅子頭 — 異国への憧憬と、時を刻む「獅子」の冠。

金魚の中でも、ひときわ豪華なひれと、頭部に冠のような肉瘤を持つ「オランダ獅子頭」。その名を聞くと「オランダから来たの?」と思うかもしれませんが、実は中国から琉球を経て、長崎へと伝わった歴史を持っています。Juane * です。こんにちは。

今日は、名前に込められた江戸の人々の想像力と、歳月をかけて完成される「成熟の美」についてお話しします。写真の金魚がオランダ獅子頭です。

「遠きもの」への憧れが付けた名前

江戸時代、鎖国をしていた日本にとって「オランダ」という言葉は、まだ見ぬ異国や、新しく珍しいものを象徴する響きを持っていました。長崎にやってきたこの立派な金魚を見た人々は、その見たこともない華やかさに敬意を込めて「オランダ」という名を冠したのです。それは、未知の世界への純粋な憧れ。今ここにはないけれど、確かにどこかに存在する素晴らしいものを信じる、人々の「目標」のようなまなざしが、この名前に宿っています。

共に過ごした時間が、形になる

オランダ獅子頭の最大の魅力は、頭部で発達する「肉瘤」です。これは生まれたときからあるものではなく、良い環境で、適切な時間をかけて慈しむことで、少しずつ、けれど確実に立派に育っていきます。飼い主がどれだけの時間を使い、どれだけ心を配って向き合ってきたかという「記憶の集積」が形になったものです。

形のあるプレゼントも嬉しいけれど、そのために費やされた「時間」こそが何よりの宝物であるように、立派に育ったその冠は、金魚と飼い主が共に歩んできた信頼の証なのです。

「獅子」としての誇りと優しさ

その名の通り、獅子(ライオン)のたてがみのような威厳を纏いながらも、泳ぎはゆったりと優雅です。強さと優しさ、そして積み重ねた時間による落ち着き。Junさんのレンズが捉えるオランダ獅子頭は、その一振りのひれが水の中で重厚なドラマを描き出します。それは、ただ美しいという言葉では足りない、命が成熟していくことの誇らしさを教えてくれているようです。

命を「成熟」させる喜び

オランダ獅子頭を見つめていると、命を育てるということは、単に維持することではなく、共に豊かな時間を積み重ねていくことなのだと実感します。 昨日よりも今日、今日よりも明日。少しずつ厚みを増していくその冠を、私たちは誇りを持って見守ります。

私たちJun * Juaneも、この「成熟の美」のように、共に過ごす時間の尊さを感じあえるアーティストでありたいと思います。

【参考資料】

名称の由来 : 寛政年間(1800年頃)に中国から琉球を経て長崎に伝わりました。当時、珍しい外来品を「オランダ物」と呼ぶ風習があったため、この名がつきました。オランダ原産ではないものの、日本独自の呼称として定着した歴史的名称です。

形態的特徴(肉瘤とひれ): 琉金の突然変異により、頭部の皮膚が肥厚して「ウェン(肉瘤)」が発達した個体を選別固定したものです。琉金よりも体型がやや長く、四ツ尾、三ツ尾のひれが非常に長く発達するのが特徴です。

成熟のプロセス : 肉瘤の発達には、適切な水温管理(高めの温度)と、タンパク質を豊富に含むエサ、そして十分な水質管理が不可欠です。生後2年から3年をかけて完成の域に達するとされ、まさに「時間の経過」とともにその造形美が完成される品種です。