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No.522026.01.21

キャリコ — 五彩のモザイクが織りなす「多様性」の祝祭。

金魚の世界で「キャリコ」という言葉を聞くと、単なる模様の名前を超えた、どこかモダンで華やかな響きを感じます。赤、白、そして深みのある藍色が複雑に重なり合うその色彩は、まるで水の中に浮かぶ「動く錦絵」。一匹として同じ模様が存在しないその姿には、命が持つ無限の多様性が映し出されています。こんにちは。

今日は、異なるルーツが溶け合って生まれた、写真の金魚「キャリコ」の「響き合う美しさ」についてお話しします。

境界線を越えて生まれた「新しい色」

キャリコ(キャリコ琉金)は、優雅な琉金と、不思議な三色の色彩を持つ出目金が出会って生まれました。 異なる品種が重なり合い、それぞれの良いところを引き出し合うことで、これまでの金魚にはなかった、深みのある「五彩」の輝きを手に入れたのです。

それは、一つの型に留まらず、新しいものを受け入れることで生まれる進化の形。異なるルーツを持つものが混ざり合うことは、時に不安を伴うかもしれませんが、キャリコの姿を見ていると、混ざり合うこと(多様性)がいかに豊かな世界を創り出すかを、言葉以上に教えてくれている気がします。

透明な鱗が作る「心の奥行き」

キャリコの美しさを支えているのは、キラキラと光る鱗と、光を透かす「透明な鱗」が混ざり合った、モザイク透明鱗という魔法です。 透明な鱗を通して、体の内側にある藍色や浅葱色(あさぎいろ)が滲み出し、表面の鮮やかな赤や黒と重なる。

この「層」が生み出す奥行きは、一見しただけでは分からない、命の深みを感じさせます。私たちは、つい表面的な色だけで物事を判断してしまいがちです。けれど、キャリコの複雑な色彩をじっと見つめていると、内側にあるものと外側にあるものが響き合って初めて、本当の個性が生まれるのだということに気づかされます。

一匹一匹が「唯一無二」という誇り

キャリコには、「完璧な正解の模様」というものがありません。 赤が多い子、藍色が深く沈んでいる子、墨色が飛び散っている子。そのどれもが正解であり、そのどれもが代わりのいない美しさを持っています。他者と比較して優劣をつけるのではなく、自分自身の持っている色をどう組み合わせて、自分らしく泳ぐか。キャリコの模様の一つひとつは、まるで「あなたは、あなたのままで素晴らしい」という、命からの祝福のように感じられます。

水底で響き合う、色の交響曲

キャリコが水槽を泳ぐとき、そこには色彩の交響曲(シンフォニー)が流れます。 バラバラな色が、一匹の体の上で一つの「美」として調和している。私たちも、この複雑で愛おしい色彩の重なりを、その一瞬の閃きまで大切に写し取っていきたい。 多様な色が混ざり合い、響き合うことで生まれる新しい光。キャリコという名の「多様性の祝祭」を、これからも皆さんと共に分かち合っていきたいと思っています。

【参考資料】

品種の成立 : 明治25年(1892年)、初代・秋山吉五郎氏によって、琉金と三色出目金(キャリコ出目金)を交配して作出されました。江戸錦や東錦などの多くの「三色(キャリコ)系」金魚のルーツとなった非常に重要な品種です。

「キャリコ」の語源 : もともとはイギリスの更紗(キャリコ織り)という綿織物の模様に似ていたことから、アメリカの金魚愛好家が名付けたと言われています。この名称が日本に逆輸入され、定着しました。

モザイク透明鱗の構造 : 普通鱗(銀色の反射層がある鱗)と透明鱗(反射層がない鱗)がモザイク状に混在する遺伝的特徴です。透明鱗の部分では体内の組織や血液の色が透け、チンダル現象によって「青色(藍色)」が見えるようになります。この鱗の配置が個体ごとに異なるため、世界に二つとない模様が生まれます。