← Juane's Note一覧に戻る
No.532026.01.21

たまさば(玉鯖)— 雪国が育んだ「丸さ」と「速さ」の共存。

真ん丸に太った愛嬌たっぷりの体に、スッと真っ直ぐに伸びた力強い尾ひれ。金魚の優雅さと、フナや鯉のような逞しさを一つの体の中に同居させた「たまさば」は、新潟県中越地方の厳しい風土が生んだ、まさに「泳ぐ宝石」です。Juane * です。こんにちは。

今日は、錦鯉の里で磨かれた、写真の金魚「たまさば」の「不屈の造形」についてお話しします。

錦鯉と競り合うための「機能美」

たまさばの最大の特徴は、琉金のような丸い体(玉)と、サバのように力強い一枚尾(鯖)の組み合わせにあります。 錦鯉の産地として知られる山古志などの地域では、金魚は広い池の中で鯉と共に育てられてきました。大型の鯉と競い合い、エサを求めて素早く泳ぐために、ひらひらとした長いひれを捨て、水を力強く蹴る「フナ尾」を手に入れたのです。それは、限られた環境の中でいかに自分を最適化させるかという、究極の機能美です。

厳冬を越える、不屈の生命力

新潟の冬は厳しく、池には分厚い氷が張ります。たまさばは、その冷たい水底で春を待つことができる、非常に高い耐寒性と生命力を持っています。過酷な状況を言い訳にせず、ただ「今ここ」で生き抜くための形、力強いシルエットなのだと思います。

自分の「形」を信じて泳ぐ

周囲に大きな錦鯉がいても、たまさばは臆することなく、自分の尾ひれを信じて突き進みます。 「自分は小さいから」と引け目を感じるのではなく、自分にしかできない「丸い加速」を活かして、大きな共同体の中で存在感を放つ。

私たち人間も、時には周囲の大きさに圧倒されそうになることがあります。けれど、たまさばの真っ直ぐな瞳と力強い一振りを眺めていると、自分の持っている個性をどう活かし、どう目標に向かうかが大切なのだと、改めて気づかされるのです。

水面に映る、雪国の誇り

たまさばの鮮やかな赤と白のコントラストは、雪国の清らかな水の中でより一層際立ちます。 飾らないけれど、誰よりも力強い。どんなに冷たい水の中でも、自分の輝きを失わずに泳ぎ続ける。たまさばが描く力強い軌跡は、私たちが明日へ向かうための、確かなエールなのではと感じます。

【参考資料】

品種の成立 : 新潟県中越地方(旧山古志村周辺)で、錦鯉の養殖の傍ら、琉金と山形金魚(サバ尾)を交配して作出されました。鯉と一緒に泳げるほど泳ぎが速く、丈夫な個体を選別し続けた結果、この独特の形状が固定されました。

サバ尾の優位性 : 通常の丸型金魚が持つ「三つ尾」や「四つ尾」は水の抵抗が大きくスピードが出にくいですが、たまさばの「フナ尾(サバ尾)」は推進効率が非常に高く、水流の強い池や広い環境での飼育に極めて適しています。

環境への適応力 : 金魚の中でも群を抜いて耐寒性が強く、氷下での越冬が可能です。また、消化機能も比較的強く、大型に育ちやすい性質を持っています。これは、環境に応答して自己の形態を確立した、高度な適応進化の例といえます。