三色が繋ぐ東洋と西洋 〜キャリコに宿る異国情緒〜
江戸から明治へと時代が移り変わる中、金魚の世界にもそれまでの「赤と白」の調和とは異なる、新しい美しさが加わりました。その象徴が、赤、白、黒の三色が複雑に混じり合う「三色(さんしょく)」、そして「キャリコ」と呼ばれる金魚たちです。
浅葱色(あさぎいろ)がもたらした変化
江戸末期に登場した「三色デメキン」などの品種は、当時の人々にとって驚きを持って迎えられました。特に、黒や赤の影から透けて見えるような、淡い青色——日本古来の呼び名で「浅葱色」と呼ばれる色彩が、金魚の体に現れたのです。
この複雑な色彩の重なりは、それまでの素朴な金魚のイメージを一変させました。鱗一枚一枚に異なる色が宿り、泳ぐたびにその表情を変える。その姿は、まるで開国とともに流れ込んできた異国の更紗(さらさ)や、万華鏡を覗き込むような新鮮な感動を人々に与えました。
「キャリコ」という響きへの憧れ
明治時代に入ると、この三色模様は「キャリコ」という言葉でも呼ばれるようになります。本来は更紗の一種であるプリント綿布(Calico)を指すこの言葉が、金魚の模様を指す言葉として定着していった背景には、西洋の文化に対する当時の人々の憧れがありました。
伝統的な和の美しさと、新しく入ってきた西洋的な華やかさ。その二つが混ざり合った三色の金魚は、まさに時代の変わり目を象徴する存在でした。それまでの「整った美しさ」を尊んでいた人々が、複雑で、時には不規則とも言える斑紋の中に、新しい「粋」や「美」を見出し始めたのです。
東洋で生まれた金魚が、西洋の言葉と出会い、新しい価値として磨かれていく。三色の色彩には、海の向こう側へと広がっていく当時の日本人の好奇心が、今も鮮やかに刻まれています。
鈴木克美『金魚と日本人』(講談社学術文庫、2019年):明治以降の品種改良の歴史と、西洋文化が金魚のネーミングや鑑賞に与えた影響についての記述。
大森義裕『金魚いろ×かたち謎解き図鑑』(化学同人、2022年):三色の色彩(キャリコ)がどのように定着し、品種として確立されていったかの文化史的記録。
岡本信明・川田洋之助『金魚(ジャパノロジーコレクション)』(角川ソフィア文庫、2015年):三色デメキンやキャリコ琉金など、色彩がもたらした鑑賞様式の多様化についての解説。





