桃の節句に泳ぐ。春を知らせる「赤い合図」
「金魚は、夏の風物詩」 そんなふうに思う方も多いですよね?
Juane * です。こんにちは。
実は江戸時代、金魚売りさんが一番忙しく街を走り回っていたのは、春の訪れを感じる今ぐらいの時期からだったんです。
「きんぎょ〜え〜」は、春を連れてくる音
まだ少し寒さが残る二月の終わり。
ふと街に「きんぎょ〜え〜、きんぎょ〜」という、あの独特の節回しが響き始めると、長屋の人たちは「ああ、もうすぐお節句(ひな祭り)だね」と、心の準備を始めたそうです。
今の私たちが、ふとした瞬間に花の香りを感じて季節の移ろいを知るように。 当時の人たちにとって、金魚売りさんの声は、暮らしの中に「もうすぐ春が来るよ」と教えてくれる、合図だったのかもしれません。
雛壇のとなりに、小さなお守りを
江戸のひな祭りでは、お雛様のすぐそばに「雛桶(ひなおけ)」という器を置いて、その中で金魚を泳がせるのが当たり前の光景でした。
単に美しいから飾っていた、というだけではなくて・・・赤い金魚は古くから「魔除け」の象徴。 「この子が健やかに育ちますように」という、切実で、でもとても温かい家族の祈りが、あの小さな赤い命に託されていたんです。
素敵ですね。
ただ眺めるだけの「鑑賞」ではなく、誰かを想う「祈り」が重なっている。
そう思うと、金魚の見え方が少し変わってくる気がしませんか?
3月3日に想いをつなぐ
現代でも、3月3日が「金魚の日」とされているのですが、この江戸時代の美しい習慣からきているそうです。
お雛様の横で静かに揺れていた、紅い命。 何百年も前から日本人が大切にしてきた「命を慈しむ心」は、きっと今の私たちの中にも、静かに流れていると思います。
私たちJun * Juaneも、そんな温かな祈りのような欠片を、作品を通して届けていけたら嬉しいです。
今年の春は、お雛様の横でゆらゆらと泳いでいた、江戸の金魚さんたちに想いを馳せてみるのも粋かもしれません。
【参考資料】
『守貞謾稿(もりさだまんこう)』:江戸後期の百科事典。春先に金魚を売り歩く様子や、ひな祭りの風俗が詳細に記されています。
日本観賞魚振興事業協同組合:3月3日を「金魚の日」と定めた根拠として、江戸時代の雛祭りの風習を公式に認めています。





