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No.082026.01.20

背中に宿る、江戸の粋。「上から眺める」という贅沢。

「金魚を眺める」と聞くと、水槽の横から泳ぐ姿を見るシーンを思い浮かべる方が多いかもしれませんね。Juane * です。こんにちは。

実は、江戸時代の人たちにとって、金魚は「横」ではなく「上」から眺めるのが当たり前だったんです。その視点が、日本独自の美しい金魚たちを育ててきました。

ガラスがなかった時代の、知恵と美学

江戸時代、今のような透明で大きなガラスの水槽はまだありませんでした。 人々は、陶器の鉢や木製のタライ、時には手桶の中に金魚を放して、その姿を上から愛でていたんです。これを「上見(うわみ)」と呼びます。

今のように横から見るのではなく、水面に浮かぶ花びらを眺めるような、そんな奥ゆかしい楽しみ方だったのですね。

「背中」が着物の柄になった理由

「上から見る」ことが基本だったからこそ、日本の金魚は背中やヒレの美しさが際立つように進化しました。 例えば「蘭鋳(ランチュウ)」や「地金(ジキン)」といった品種。上から見た時の体の曲線や、パッと開いた尾ヒレの形は、まるで水の中に描かれた「動く着物の柄」のようです。

横からでは気づけない、上から見て初めてわかる美しさ。 それは、見えないところにお洒落を詰め込む、江戸っ子たちの「粋」の精神にも通じている気がします。

素敵ですね。

限られた条件の中でも、最高に美しい角度を見つけ出し、それを愛でる。 今の私たちが、忙しい毎日の中でふと足元に咲く小さな花に気づく瞬間の喜びと、どこか似ているような気がしませんか?

結びに:視点を変えれば、新しい美しさに出会える

「上から眺める」という江戸の習慣。 それは、一つのものを多角的に見る、という大切な教えをくれているようです。

私たちJun * Juaneの作品も、時には上から、時には光を透かして……。 皆さんが自分だけの「一番好きな角度」を見つけられるような、そんな自由で豊かな視点をお届けできたら嬉しいです。

【参考資料】

「上見(うわみ)」の文化:江戸時代の浮世絵(歌川国芳や歌川広重など)に描かれている金魚は、そのほとんどが陶器の鉢やタライに入れられており、人々が上から覗き込む姿が描かれています。

ガラスの歴史:日本で透明な板ガラスが一般に普及し、横から見る「ガラス金魚鉢」が広まったのは明治時代以降のこと。それまでは不透明な容器での飼育が主流でした。

品種改良の基準:蘭鋳(ランチュウ)などの伝統的な品種の品評会では、今でも「上から見た姿」が最も重要な審査基準となっています。