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No.662026.01.22

令和水景図:第九景「合言葉(あいことば)の迷宮・記憶喪失の輪廻転生」

パスワード・・・。いつも忘れます・・・。

【解説】

作品名:
令和水景図:第九景「合言葉(あいことば)の迷宮・記憶喪失の輪廻転生」
主演:
己の脳みそを信じて裏切られ、白目を剥くオランダ獅子頭
特記:
入力すれば「違う」とはねられ、直そうとすれば「前と同じだ」と拒まれる。これぞ令和の世の、最も無情な門問答なり。

お立会い!これぞ現代の電子仕掛けが生んだ、出口なき迷宮の図でございます。久方ぶりに開こうとした大事な文箱を前に、金魚は「たしか、あの時の合言葉はこれだった」と、震える鰭(ひれ)先でポチポチと文字を打ち込んだ。ところが画面には「合言葉が違います」と燃えるような赤字が突きつけられ、金魚は「おや、おかしいな」と頭をかきむしり、脂汗を流す始末でございます。

ならばと、心機一転、今度こそはと「新しき合言葉」をひねり出し、必死の思いで並べ立てれば、今度はカラクリが青筋立てて「この合言葉、過去と同じは罷(まか)りならぬ!」と門前払い。さっきまで「違う」と言い張っていたくせに、変えようとした途端に「それはお前の古い合言葉だ」と見抜いて見せる。そう、カラクリは決して狂わぬ。狂っているのは、信じ切っていた己の「記憶」の方なのでございます!

この残酷なまでの正確さに追い詰められ、右を向けば壁、左を向けば落とし穴。己の不甲斐なさを突きつけられ、金魚は白目を剥いて泡も出ないほどの虚脱感に襲われております。陸に上がり、己が己であることを証明しようと泥沼にはまる、滑稽にして愛おしき金魚たちの姿をどうぞお楽しみあれ。