【金魚江戸噺】第二夜:出目金(でめきん)の深読み
皆様、ようこそお越しくださいました。 私、遊魚亭 潤妙楽が、江戸の町に暮らす金魚と人々の可笑しな物語を語ってまいります。
第二夜は、ぎょろりと大きな目が愛嬌たっぷりの「出目金」にまつわるお話。 自意識過剰な男と、何も語らぬ金魚の、おかしな掛け合いをどうぞ。
それでは、はじまり、はじまり……。
第二夜:『出目金の深読み』
今日は「出目金」のお話でございます。 あの突き出した大きな目。あれで一体何を見ているのかと思えば、実はあんまりよく見えてねえなんて話もございますが、江戸の人はあの姿を「先が見通せる」なんて言って縁起を担いだそうで。
さて、ここにも一人の男が、出目金をじーっと眺めております。
「……おい、出目。お前、さっきからあっしの顔をそんなにジロジロ見て、何を言いたいんだ?」
この男、名を熊五郎と申しまして、少々自意識過剰なところがある。自分がちょっとでも後ろめたいことをすると、金魚に見透かされているような気がしてならないんですな。
「ご隠居、聞いてくださいよ。うちの出目金、あっしが昨日、女房に隠れて酒を飲んだのを知ってるような目をするんですよ」
「熊さん、それは考えすぎだよ。金魚ってのは、ただエサを待ってるだけなんだから」
ご隠居に笑われても、熊五郎は納得がいかない。 ある日、熊五郎が道端で財布を拾った。中には小銭が少々。「これくらいなら、神様も許してくれるだろう」と、懐にねじ込んで長屋に帰ってくると、水槽の出目金が、今まで以上に目をひんむいて自分を見ている。
「お、おい……。そんなに目を大きくして見るなよ。わかってるよ、返せばいいんだろ、返せば!」
熊五郎、たまらず番所(ばんしょ)に財布を届けに出た。「ふぅ、これで一安心だ」と戻ってくると、今度は出目金、心なしかさっきより目が飛び出しているように見える。
「なんだい、まだ何か言いたいのか?……はっ!そうか。お前、あっしが届けた時に『お礼の品』を期待してたのを、また見透かしたな!」
熊五郎、自分の心の動揺をすべて金魚のせいにしちまう。あまりにうるさく言うもんですから、ご隠居が呆れてこう言いました。
「熊さん、あんまり金魚を怖がるもんじゃないよ。出目金の目はね、横についてるから、お前さんのことを見てるようで、実は『隣の晩御飯』を気にしてるだけなんだから」
熊五郎、それを聞いてがっくり。
「なんだ、あっしの隠し事じゃなくて、隠し味を気にしてたのかい」





